はじめに
Cloudflare R2
は安価で高性能なオブジェクトストレージサービスだが、EC2
から直接ファイルシステムのようにアクセスしたい場合がある。
今回はs3fs
というツールを使って、Cloudflare R2
のバケットをEC2インスタンスにマウントしてみる。
S3互換のAPIを持つR2なので、S3用のツールがそのまま使えるのが便利。
環境
AWS EC2 (Amazon Linux 2023)
Cloudflare R2
s3fs-fuse 1.95 (ソースビルド)
準備
EC2インスタンスの作成
項目 | 設定値 |
---|---|
名前 | server |
OS | AmazonLinux2023 AMI |
アーキテクチャ | 64ビット(Arm) |
インスタンスタイプ | t4g.micro |
キーペア | server(新規で作成) |
セキュリティグループ | ssh (自分のIPのみ) |
ストレージ | 8GB (gp3) |
Cloudflare R2のバケットとAPIトークンを準備
R2バケットの作成 (※既に作成済みであれば不要)
- CloudflareダッシュボードからR2を選択
- 「バケットを作成する」でバケットを作成
APIトークンの作成
作成されたAPIトークンの情報をメモしておく
※「S3 クライアントには次の認証情報を使用します。」という記載の部分が重要となる。
- アクセスキーID
- シークレットアクセスキー
- エンドポイント (例:
https://1234567890abcdef.r2.cloudflarestorage.com
)

EC2での設定
s3fsのインストール
# 必要なパッケージのインストール
sudo dnf update -y
sudo dnf install -y git gcc gcc-c++ fuse fuse-devel libcurl-devel libxml2-devel openssl-devel make automake autoconf pkg-config
# s3fs-fuseのソースコードをダウンロード
git clone https://github.com/s3fs-fuse/s3fs-fuse.git
cd s3fs-fuse
# ビルドとインストール
./autogen.sh
./configure --prefix=/usr/local
make
sudo make install
# パスを確認
which s3fs
/usr/local/bin/s3fs
バージョンを確認する
s3fs --version
[ec2-user@ip-172-31-24-82 s3fs-fuse]$ s3fs --version
Amazon Simple Storage Service File System V1.95(commit:8d68b8a) with OpenSSL
Copyright (C) 2010 Randy Rizun <[email protected]>
License GPL2: GNU GPL version 2 <https://gnu.org/licenses/gpl.html>
This is free software: you are free to change and redistribute it.
There is NO WARRANTY, to the extent permitted by law.
認証情報の設定
s3fs
でCloudflare R2
の認証情報を設定する。認証情報ファイルを作成する方法と環境変数で設定する方法がある。
認証情報ファイルを作成する方法
認証情報ファイルの形式:
項目 | 説明 | 例 |
---|---|---|
your-bucket-name | CloudflareR2のバケット名 | my-r2-bucket |
YOUR_ACCESS_KEY_ID | アクセスキーID | abcd1234efgh5678 |
YOUR_SECRET_ACCESS_KEY | シークレットアクセスキー | 1234567890abcdef1234567890abcdef12345678 |
# 認証情報ファイルを作成
echo "YOUR_ACCESS_KEY_ID:YOUR_SECRET_ACCESS_KEY" > ~/.passwd-s3fs
chmod 600 ~/.passwd-s3fs
環境変数で設定する方法
export AWS_ACCESS_KEY_ID=YOUR_ACCESS_KEY_ID
export AWS_SECRET_ACCESS_KEY=YOUR_SECRET_ACCESS_KEY
s3fsでのマウント
マウントポイントの作成
sudo mkdir -p /mnt/r2-bucket
sudo chown ec2-user:ec2-user /mnt/r2-bucket
fuser.confの修正
user_allow_other
を有効にする。
# mount_max = 1000
-# user_allow_other
+user_allow_other
マウント
s3fs [バケット名] /mnt/r2-bucket \
-o passwd_file=/home/ec2-user/.passwd-s3fs \
-o url=https://[エンドポイント] \
-o use_path_request_style \
-o allow_other
マウントの確認
df -h | grep r2-bucket
結果
s3fs 64P 0 64P 0% /mnt/r2-bucket
ls -la /mnt/r2-bucket/
結果
[ec2-user@ip-172-31-24-82 ~]$ ls -la /mnt/r2-bucket/
total 8
drwxrwxrwx. 1 ec2-user ec2-user 4096 Jan 1 1970 .
drwxr-xr-x. 3 root root 23 Jun 28 09:35 ..
drwxr-x---. 1 ec2-user ec2-user 4096 Jan 1 1970 movie
バケット内のファイルが表示される。
実際の使用例
ファイルの読み書き
# ファイルの作成
echo "Hello from EC2!" > /mnt/r2-bucket/test.txt
# ファイルの確認
cat /mnt/r2-bucket/test.txt
Hello from EC2!
ディレクトリの作成
## s3fsの実装なのかディレクトリがR2の方にも作成されていた.
mkdir /mnt/r2-bucket/logs
echo "Log entry 1" > /mnt/r2-bucket/logs/app.log
自動マウントの設定
/etc/fstabによる永続マウント
サーバー起動時に自動的にマウントされるように/etc/fstab
に設定を追加する。
# /etc/fstabにエントリを追加
sudo tee -a /etc/fstab << 'EOF'
your-bucket-name /mnt/r2-bucket fuse.s3fs _netdev,passwd_file=/home/ec2-user/.passwd-s3fs,url=https://1234567890abcdef.r2.cloudflarestorage.com,use_path_request_style,allow_other 0 0
EOF
fstabエントリの説明
項目 | 説明 |
---|---|
your-bucket-name | バケット名 |
/mnt/r2-bucket | マウントポイント |
fuse.s3fs | ファイルシステムタイプ |
_netdev | ネットワークが利用可能になってからマウント |
passwd_file | 認証情報ファイルのパス |
url | Cloudflare R2のエンドポイント |
use_path_request_style | パススタイルリクエスト使用 |
allow_other | 他のユーザーからのアクセス許可 |
0 0 | ダンプとfsckのオプション(無効) |
fstabの設定確認
# fstabの内容を確認
tail -1 /etc/fstab
手動マウントテスト
# fstabエントリを使って手動マウント
sudo mount /mnt/r2-bucket
# マウント状況の確認
mount | grep r2-bucket
自動マウントのテスト
# アンマウントしてから再起動テスト
sudo umount /mnt/r2-bucket
# 再起動(または mount -a でテスト)
sudo mount -a
# マウント確認
ls -la /mnt/r2-bucket/
注意事項
_netdev
オプションにより、ネットワークサービス開始後にマウントが実行される- 認証情報ファイル(
~/.passwd-s3fs
)はec2-user
で読み取り可能である必要がある /etc/fstab
のエントリは実際のバケット名とエンドポイントに置き換える必要がある
アンマウント
umount /mnt/r2-bucket
または
fusermount -u /mnt/r2-bucket
トラブルシューティング
今回、マウントするにあたってバケット名を間違えてアクセスできないということがあった。
デバッグオプションを付けたら気づけたので、以下にトラブルシューティングを記載する。
よくある問題
- マウントできない場合
-o dbglevel=info -f -o curldbg
オプションを付けてデバッグログを確認する。
# エンドポイントとバケット名を確認
s3fs your-bucket-name /tmp/test \
-o passwd_file=/home/ec2-user/.passwd-s3fs \
-o url=https://1234567890abcdef.r2.cloudflarestorage.com \
-o use_path_request_style \
-o dbglevel=info -f -o curldbg
- 認証エラーが発生する場合
# 認証情報ファイルの権限を確認
ls -l ~/.passwd-s3fs
# 600 (rw-------) である必要がある
- 権限エラーが発生する場合
# マウントポイントの権限を確認
ls -ld /mnt/r2-bucket
# FUSEグループに所属しているか確認
groups
参考
s3fs-fuse - GitHub
https://github.com/s3fs-fuse/s3fs-fuseCloudflare R2 Documentation
https://developers.cloudflare.com/r2/AWS S3 API Compatibility
https://docs.aws.amazon.com/AmazonS3/latest/API/
おわりに
s3fs
を使うことで、Cloudflare R2
バケットを通常のファイルシステムのようにEC2
から扱えることを試した。
S3
互換APIのおかげで、既存のS3用ツールがそのまま使えたので特に困ることはなかった。
互換性の観点でよいところが多いので、R2
でも既存のツールを使えるのが非常に良い!
今後、S3
の代わりにR2
を使おうとなったときでも、こういう方法でマウントはできるので覚えておきたい。
ただし、ネットワーク経由のアクセスなので、パフォーマンス面での制約があることは理解しておく必要がある。
キャッシュ機能や並列転送の設定を適切に行うことで、ある程度のパフォーマンス改善は期待できそうだ。
ログファイルの保存や、バックアップデータの管理など、リアルタイム性を要求されない用途には実用的と思う。